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2006/02/13

日本が危ない:少子化問題の真実 2

人口増加の歴史

日本において人口が急増することとなったのは、戦後のことである。
明治5年、初の調査で約3500万人だった人口は、60年後の昭和7年の時点で約6700万人と3000万人強が増えたに過ぎない。
一方で、昭和19年から平成16年までの60年間で、人口は1億2700万人を超え、5300万人以上も増加している。
高度成長期以降でも、明治時代の総人口分の人口が増えているのである。

良く知られているように、人口は基本的に食料の生産(供給)能力に比例する。
有史以来、極めてゆっくりと増加してきた日本の人口は、何回かの画期的な技術革新により急増した。

最初は、弥生時代の稲作の普及である。
不安定な採集生活から、安定した食糧を確保できる定住生活に移行したことで、人口は急増した。

次は、室町時代末期から江戸初期にかけてである。
封建制が確立され、基本的には平和な時代であった室町時代には農業生産の技術革新が進んだ。
徳川幕府が成立し政情が安定したことで、一気に人口は倍増している。

江戸時代初期に急増した人口は、元禄以降はほとんど変化していない。
封建体制の確立によって、技術の進化が停滞したと考えるのは誤りである。
平和な江戸時代は、停滞の時代ではなく、むしろ革新の時代であった。
稲を中心とする品種改良は盛んであったし、新田開発による耕地面積の拡大も著しい。
街道網の整備や水運網の発達によって、居住可能な地域自体も大きく広がっているのである。
人口が増加しなかった理由は、鎖国体制にあって、渡来技術による画期的な技術革新が望めないなかで、
日本の耕地面積で生産できる食物量が限界に達した結果と言えるだろう。
結果として、明治維新前の200年あまり、日本の総人口は約3000万人強であった。

その均衡が破れて、再び人口が増加しはじめるきっかけは、明治維新である。
開国により欧米の農業技術や新しい品種の導入が進んだことや、高速交通網の整備が整備されて食糧供給力が高くなったのである。
明治維新後、現在に至るまで人口は一貫して急増し続けている。
人口は一旦増加しはじめると、環境が変化しない限りネズミ算式に増加を続ける。

戦後の人口増加は、安定して大量の食糧を海外から調達することが可能であったことが大きい。
経済成長により獲得した外貨の多くが食糧輸入にあてられたのである。
戦後、日本の政情が安定し、経済の拡大に伴う国民の所得が向上したこと、
そして医療技術の進歩により幼児死亡率や高齢者の死亡率が激減したことも重要である。

人口増加がもたらしたもの

昭和40年頃から公害や都市問題が顕在化したのは、当時の産業技術や法体系の不備に原因を求めることが一般的である。
しかし、当時既に1億人に達していた人口が、国土面積に不相応に多くなったことも、大きな原因の一つである。

人口の絶対的増加に加え、大都市圏への人口集中が、高度成長期以降は特に顕著になった。
東京を始めとする大都市圏は、限りなく拡大を続け、何十キロにも及ぶ広大な住宅地を形成した。
中心部の業務地区に通勤する労働者が密集する地区は、緑地面積が極度に少なく、宅地そのものも狭小な劣悪な環境であった。
近郊住宅街や中心部に、いわゆる都市型犯罪が多発する原因から、人口密集を除いて考えることはできない。

狭い鳥小屋で大量に飼育されるブロイラーを考えるといい。
自然な方法で飼育可能なニワトリの数を100羽とすると、同じ面積に巨大なケージ(鳥かご)を作り
400羽も飼育しているのが、現在の日本である。
不足する飼料は輸入し、運動不足と過密から生じる疾病には各種の薬剤を投与し、
極限まで土地の利用効率を上げ、生産効率を高めているのである。

本来、約3000万人なら平和に暮らせる国土である。
そこに1億2000万人以上が暮らしている。
その過大な人口を支える食糧を輸入し、人口過密による病理に苦しんでいるのが現代日本なのである。

しかも、食糧輸入に必要な外貨獲得のために、国民がひたすら長時間の労働を強いられているのは、本末転倒で滑稽ですらある。
人口が減少することは、そこに暮らす国民にとって、そのような異常な状況から抜け出す大きなチャンスなのである。


世界と較べる人口密度

明治5年に91.2人/?だった日本の人口密度は、平成16年現在342.4人/?となっている。
離島から原野まで含めた日本全国あらゆる1キロ四方に、340人以上の人がまんべんなく暮らしている計算である。
過密と過疎が併存しているのが、日本の人口分布の特徴であり、大都市圏は遥かに人口密度が高い。

人口密度を世界各国と比較してみたい。

隣の韓国は、日本を上回る476。台湾は620。シンガポールや香港は、桁が違っていずれも6000以上。
しかし、韓国や台湾においては日本ほど都市への人口集中が極端ではなく、都市部の人口密度は日本のほうが高い。
シンガポールや香港は、いわば東京の中心部だけが独立しているようなものであり、ごく特殊な地域である。

いかにも人口が多そうなインドは、314。フィリピンは260に過ぎない。
アメリカは、わずかに30。
ヨーロッパではイギリスが246、イタリアは192、フランスは107である。
オランダが386で唯一日本を上回るが、北欧3国にいたっては一桁低い10〜20人/?でしかない。

全世界の人口密度は45人/?であり、日本の人口密度は、先進国・発展途上国を通じて最も高い国の一つである。

国土の狭さを、人口の多さでカバーしている一群の国家があることが、この数字から解る。
経済力を国力と考えたとき、人口、国土面積、技術力は、その大きな要素なのであろう。

豊かさと人口

しかし、国力と国民一人ひとりの豊かさは必ずしも比例していないことは重要である。

西欧各国、特に北欧諸国の国民は総じて豊かな生活を送っていると言って良いだろう。
莫大な貿易黒字がなくても、国民の豊かさは実現できるのである。

まず、人口密度の低さゆえの自然環境の良さがあげられるだろう。
日本に顕著な土地不足や住宅不足が生じないことも、大きな要素である。
住宅面積が大きいだけでなく、土地や住宅の値段が低いことが、国民の生活に経済的余裕を生むのである。

実際、日本における生活の豊かさを損なう大きな原因の一つは、住宅取得のための費用の高さにある。
政策的に公共住宅の供給が抑制され、持家政策がとられていることもあるが、
人口に対して絶対的に国土面積が不足していることは否定できない。

日本の大都市の環境が、徐々に悪化し始めたのは大正時代と言われる。
明治時代から昭和初期まで、東京の都心にあっても相当量の貸家の供給があり、
ごく一般のサラリーマンが無理なく借家生活を送っていた。
関東大震災により、それら都内の貸家が消滅し、首都圏への人口の集中が一層顕著になったのが昭和初期である。
山手線外周に劣悪な住宅地がスプロール状に広がり、都市問題が一気に噴出したのである。
都市への人口流入と住宅地の無秩序な拡大は、現在まで続く日本の大都市圏の基本的病理である。

大正初めの人口密度は約140人/?、ヨーロッパ主要国の現在の人口密度とほぼ同じである。
自然と共存して、人が豊かに暮らすための限界はこのあたりなのだろう。
その2.5倍の人口密度に達している現在は、やはり人が多すぎると言わざるを得ないのである。

(続く)

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