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2006/02/28

日本が危ない:年金の危機 まとめにかえて

提案への若干の補足的・蛇足的説明

今回の改革によっても、年金制度は、破綻を回避することはおろか、国民からの信頼を回復することすらできないことは明らかである。
年金を、国が責任を持つ社会保障部分と、個々の国民が自己責任で行う個人保険部分に明確に分離すべきであると言うのが、今回の提案の要である。
特に重要なのは、社会保障部分については、個人としての国民のみが年金の財源を負担するのではなく、企業や関税など幅広い税財源により、その給付を担うべきとの考えである。
積立や相互扶助的な仕組みと意図的に混同させることで、労働者が相互に支え合うかのごとき説明がなされていることには、政府の悪意さえ感じられる。
国が責任を持つとは、言葉どおり国家を運営する組織体として、その構成員であり主権者である国民に対して、あらゆる歳入から給付額を捻出するとの意味である。
一方で、どれだけの年金額を給付すべきかについては、財源の制約からではなく、国と個人が負うべき責任の割合を前提に決定するべきである。
すべてを国の責任とすれば、今はなき社会主義国と同様に国家財政の破綻と国民の勤労意欲の減退を招くかもしれない。またすべてを個人の責任とするなら、それは19世紀の荒々しい初期資本主義社会への回帰であり、20世紀の社会の進歩の成果を放棄することに他ならない。
いずれにせよ、それを決定するのは主権者であり、当事者である国民であり、官僚でないことを、国民自身が認識することこそ重要であろう。

改革は出来る

日本においては、その歴史的背景なのか、民族性なのかは不明だが、自らの生活設計に真剣に取り組む国民が多いことは救いである。
貯蓄率の高さはもちろん、生命保険加入率の高さは世界的にも異常ともいえる水準である。
年金も基礎部分を国が保障しても、多くの国民が自らの老後のために自主的に年金保険に加入することは、ほぼ間違いがないだろう。
国として税制などにより的確に誘導すれば、保険料の徴収などに苦労することもなく、また将来国が給付の責任を負うこともなく、必要十分な年金システムが民間ベースで構築可能であるに違いない。
控除により失われる税金=歳入と、非効率的な公的年金機構を維持するための費用=歳出のどちらが大きいかは詳細な検討することなく明らかである。
個人が自らの将来のために掛金を払うことには十分な動機があり、その費用対効果を最大限にするため、各人は努力を惜しまない。
一方で、所詮は他人の金を漫然と集めて給付するに過ぎない公的機構には、事務の効率化を図る内的要因すらない。支払いたくない人から金銭を徴収することには多大なコストが必要であり、給付を公平に行うための努力は形だけのものにならざるを得ないのである。

改革を妨げるもの

なぜ、そのような抜本的改革案が俎上にすらのらないのか。
理由は一つである。現在の年金制度で利益を得ている者がいて、現行制度の廃止によって致命的打撃を受けることを知っているからである。
一昔前に「パワーエリート」というアメリカの権力構造を分析した名著があった。官僚・軍・軍事産業が相互の利益を図るために権力の複合体を構成していて、その維持と拡大が自己目的化していることを指摘したものである。
日本の公的年金制度においても、そのような利益複合体が形成されていて、改革を妨げているのである。
現行制度に深く関わっている当局からは、その根幹を否定するような代案は決して提出されないことは十分認識しておかなければならない。
さらに、その複合体の主たる構成員である官僚のみが、改革の実質的に唯一の実行者である以上、年金改革の失敗は明らかなのである。

すべての政治家へ

巨大で優秀なシンクタンクである日本の官僚機構が、国民の利益のためでなく自らの利益を維持し拡大するためにその能力を発揮するとき、主権者たる国民はどうすれば良いのか。
官僚機構を直接統制する手段を国民が持たない現状では、政治を通じてそれを実現するしか方法はない。
最後に与野党、中央地方を問わず政治に身を置く人達にお願いしたい。官僚に依存せず政策を立案する能力を獲得してほしい。個人として困難なら連携して、党として独自に優秀なシンクタンクを持ってほしい。
日本において必要なのは、多様な国民のニーズを具体化するための多様な具体的な選択肢である。
政治家が、官僚が立案する唯一の政策を支持し、または反対するだけでは、国民の期待に応えることはできない時代はすでに到来しているのだから。

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