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2006/02/26

日本が危ない:年金の危機 3

年金についての第3回をお届けします。いよいよ本題の改革案です。
次回・最終回で若干の補足説明を予定しているので意見やコメントなどよろしくお願いします。

21世紀を支える新しい年金制度の提案

現在提案されている年金改革は、抜本的な制度改革とはほど遠い破綻先延ばし策に過ぎない。
今必要なのは21世紀中、破綻しない新しい年金システムのアイディアである。
ここで一つの新しい仕組みと理念を提案したい。細部についての検討はまだまだ不十分な正に「骨太な案」である。

新しい年金案

公的年金は、現在の基礎年金部分に相当する部分のみとし「国民権利年金」と呼称する。
*国民権利年金額は、生活保護費の額を下回らないよう法律で定める。
*年金給付は、債務負担行為として概ね10年を単位として国の予算により行う。
*財源は全額を国税とし、特別会計を設定する。
*消費税と法人税の一定割合を国民権利年金の財源にあてる。また、その割合は5対5とする。
*国民権利年金は、国民であることを持って、一定年齢に達した場合全員が受給できる。ただし、特に所得が多い場合にあっては、税額控除により実質的に交付する。
*年金事務は、税務署と社会保険事務所を統合して設置する国民生活事務所(仮称)で行う。
*生活保護制度との整合を図り、国民権利年金対象者への給付は年金に一元化する。

厚生年金、共済年金等の現行の公的年金制度は廃止・清算する。

*現在の年金制度運用機関は、運営主体ごとに加入者の意向により解散又は存続する。
解散する場合は残余財産を各加入者に分配し清算する。清算金が既に支払った掛金を下回るときは、特別立法により国費において補填する。
*存続する場合は、改めて他の民間事業者と同様に免許を受け民間保険事業者として存続する。
個人年金保険契約を各加入者と締結することができるが、民営化時の各加入者には当然に契約を締結しない自由が認められる。その場合、既に支払った掛金は保険掛金と看做して各加入者に返還される。
*既に年金を受給している者に対する給付は、特別立法により現在の水準を下回らないよう国が債務を引き継ぎ継続して行う。

民間事業者による個人年金保険を育成強化し、任意の加入を促進する。

*個人年金掛金は、全額を所得から控除する優遇措置を恒久的に行う。
*個人年金給付金は、所得課税を免除する。
*民間事業者の破綻を防止するため、国による再保険制度を創設する。

改革の理念

国民の老後の生活を保証するのは、国の基本的な役目である。
年金の性格を巡っては、有力な2つの考え方がある。
一つは公的な強制貯蓄制度的なものとみる考え方であり、もう一つは公的な相互扶助制度的なものとする考え方である。
貯蓄と考えると死亡により権利が失われ、相続もできない点が不合理である。一方、相互扶助であるなら、掛金と受給額に関連性が強い点が不合理であり、公的資金を投入する根拠が不明朗であるなど、いずれの説も一長一短があると言わざるを得ない。
しかし、年金とは独立して完結する制度ではなく、社会福祉的側面を有していることを十分認識しなければならない。年金の給付が一定年齢以上の国民に限って給付され、所得によって給付に制限があることからも、それは明らかである。
仮に何らかの理由で年金制度に加入せず、年金が給付されない国民があれば、それは生活保護などの形で国が救済する。それが20世紀的福祉国家の原則である。
国とは抽象的存在でも国民と対立する存在でもない。国が行うとは、国民の総意により税金により給付が担保されることに他ならない。
そのような認識を前提として、自らの選択により所得を浪費し、悲惨な老後を迎えている個々人に対して、救済の手を差し伸べるべきかは十分に議論の余地はある。 だれでもが知っている欧米の寓話「アリとキリギリス」そのものであり、国家や社会の存在とともにある課題に違いない。(貴方はキリギリスを見殺しにするアリを非情と思うだろうか。あるいはキリギリスの自業自得と思うのだろうか。)
しかし、現状はそれを「是」としていることは十分認識をしてしかるべきである。
すなわち、日本が今後も福祉国家であることを標榜する限り、最低限度の生活を保証する年金制度は、国民の総意により全額を税金で賄うことが適当である。

基礎的な年金の財源は、労働者=勤労者のみが負担するものではない。

国民の老後に責任を負うのは国である。国を構成するのは、自然人である個人だけではなく、法人も存在する。
国の責任である以上、年金の財源は現役の労働者のみが負担する必要はない。
年金の財源となる税金を誰からとるかに合理的絶対的なものはない。乱暴な話ではあるが、雇用保険や社会保険などは伝統的に労使折半を原則としてきた。当面同様に法人の所得と個人の所得(消費)から折半で負担することで良いのではないか。
いずれにせよ、労働者間の相互扶助的に制度設計を行うことは誤りである。

自助努力と競争原理の導入

個人個人が自らの生涯について責任を持ち、自助努力を基本に生活設計を行うことは絶対に必要である。老後や失業に対して国が責任を持ち、生活保証に万全であった社会主義国において、それは安心をもたらす一方で、競争を消滅させ社会に必要な活力を失わせた。
自らの努力が正当に報われてこそ、個人は努力をするという、人類の本質とも言うべき性質が改めて実証されたのである。
年金制度についても、国民が全体として合意する水準の公的年金を整備し、税金で賄うことは異論がないところであろう。水準が高すぎるなら国民が十分に議論をして、公平を確保しながら給付と負担の水準を定めればよいのだから。
一方で自助努力を促進する仕組みは重要である。
若いうちに多くを使い老後にリスクを残すのか。若いうちに我慢して安泰な老後を確保するのか。個人の価値観や環境によってどちらが良いとは一概に言えないが、そのための選択肢は豊富に用意されなければならない。価値が多様なとき、価値を統一するのではなく、それに応える多様な選択肢を用意するべきなのである。
われわれはそのために民間事業者を活用することが有効であることを既に知っている。ニーズがあるところにサービスが発生するのが資本主義社会の素晴らしいところである。
個人年金保険についての規制を大幅に緩和して多様なサービスが提供可能な環境を作ることで、概ね目標は達成可能である。もし、国がそれを望ましいと考えるのであれば、税制面で優遇することで一層の促進を図ることができるはずである。また、破綻が危惧されるなら公的な再保険制度が有効であろう。
いずれにせよ、年金制度に選択の余地がなく、競争原理が働かないことは重要な問題である。
年金運営主体に競争原理を導入することで、多様な価値に見合った豊富な選択肢の提供と運営コストの削減が同時に実現されるのである。

追伸:
配信後、最終回を執筆のため改めてサイトを検索していたところ、既に1年半以上前に提案した改革案に良く似た案が提示され、活発に議論されていることを発見した。
自らの不勉強を反省するとともに、敬意をこめてご紹介させていただく。
参考になる意見が多数掲載されているので、併せてご一読いただきたい。

「週刊!木村剛」

なお、これだけの議論が行われながらも、何ら政府案に反映されなかった事実に日本の政策立案過程の深刻な問題を改めて認識するのである。

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