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2006/04/10

日本が危ない:靖国神社問題の本質 2

靖国神社を学ぶ

別格官弊社としての靖国神社

問題の深刻化に伴い詳細な歴史を掲載したサイトも多くなっているので、ここではごく簡単に靖国神社の歴史を振り返ってみたい。
靖国神社は、明治維新の新政府軍死者を慰霊するため創建された招魂社を起源とする。
祭神は二柱あり、複数の皇族が神格化した一柱、そして国の為に殉死したその他全ての国民(臣民)が神格化した一柱である。
戦死者を祀る特殊性から、管轄は他の神社と異なり、陸海軍が共同で管理していた。
戦前の神社は、その社格に応じて伊勢神宮を頂点にヒエラルキー(階層)構造に構成されていたが、靖国神社は体系上も別格官弊社として特殊な位置づけにあった。

靖国神社への合祀が意味するもの

国家神道体制において、靖国神社は特別な役割を与えられていた。国の為に戦士した全ての国民(臣民)を神として祀る役割である。
明治維新後、段階的に整備構築されていった国家神道体制においては、極論すれば国は天皇のものであり、国民はその構成要素に過ぎない。
国民の最大の義務は国すなわち天皇を守ることにあって、戦争において命を投げ出すことは、国家によって顕彰されるべき最大の美徳にほかならなかった。

その具体化した象徴が靖国神社を頂点とする国家神道の装置としての神社である。
国民は戦死することで靖国神社の神となる。神である以上、各家庭において先祖として祀るのではなく、国の責任において祭祀を行い慰霊するのが、国家神道体制の特徴である。
実際には戦死した国民は、各家庭や菩提寺において昔どおりに祀られていたのであるが、建前上はあくまで神格化した霊は、靖国の神と一体化することとされていた。

そこには、各国民の選択の余地はない。国が国の為に死んだと一方的に認めることで合祀が行われ、個人の宗教上の理由は認められないのである。
国家神道は宗教ではなく、国家の「仕組み」に他ならない。したがって、国内のキリスト教徒や仏教徒はもちろん、日本に併合され国籍を有していた植民地の住民までもが、その宗教や信条に関わらず、靖国神社に一方的に合祀されていたのである。

実はこの仕組みは現在も生き続けている。宗教法人として靖国神社は独自の基準により一方的に合祀を続けていて、合祀される側にはそれを拒否する方法はない。
さらには、自衛隊員が公務死(戦死)した場合にも同様に合祀されていて、キリスト教徒である遺族から訴訟が提起されても、戦前とほとんど変わらない理論構成によって、今も合祀が続けられている事実はもっと知られてもよい。

護国神社そして忠魂碑

現在、靖国神社は全国で唯一つ、東京の九段にある単独の宗教法人に過ぎない。
しかし、戦前の国家神道体制においては、戦死者慰霊祭祀システムの頂点に立つ特殊な神社であった。
各都道府県に一社づつ定められた護国神社を直接の末社とし、市町村・部落単位で建立された忠魂碑を末端とする、戦死者を慰霊する国家システムであった。

護国神社の祭神は、靖国神社の祭神と同一とされ、靖国神社への参拝を代替する機能を担うものである。その観念的仕組みは、富士山信仰において、各地に築造された富士塚の機能と類似している。護国神社を参拝することで、靖国神社を参拝したのと同様の意味があるとの位置づけである。
当時、国の地方機関であった県庁所在地にある護国神社は、宮城(皇居)拝搖台や国旗掲揚台などと一体となって、全国各地での軍事に関する国家神道行事の中核を形成していた。

各地に建立された忠魂碑は、まさに村落の靖国とも言える存在である。神社の形式をとらず、遺骨が納められているわけでもない石碑であるが、主に在郷軍人会が設置管理していて、出征兵の壮行会など戦争と軍事に係る地域の行事の舞台として活用された。
碑には戦死者名簿などが納められることが一般的であったようで、各家庭における慰霊にかえて、戦死した親族の墓標機能も期待されたものであった。
この忠魂碑については、戦後数多くの判例が積み重ねられることで、単なる記念碑的存在ではないことが明らかにされている。
忠魂碑は、まさに国家神道体制の装置として機能した存在であった。

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