« 105円の本達:景山民夫「モンキー岬」 | トップページ | BraveLife:本田美奈子は永遠に »

2006/07/27

日本が危ない:共謀罪は絶対に危ない3

警察の変質 民主警察から思想警察へ

共謀罪が成立すれば、戦後曲りなりにも民主警察として運営されてきた日本の警察機構が決定的に変質することは不可避です。

現在の警察は犯罪が行われた後で、科学的方法で捜査を行い犯人を逮捕することを、基本的な使命としています。その手続きは厳格に法令に定められていて、何が犯罪なのかについて一義的に警察が判断することはないことが原則です。

一方で、共謀罪はその目的とするテロ犯罪の予防・防止を考えてもわかるように、基本的に犯罪を事前に察知し抑止することを目的としたものです。すなわち、警察は、常に総ての国民や市民の活動を網羅的に把握し、共謀罪を構成する犯罪が行われる可能性を発見し次第、その当事者が犯罪に着手する前に、逮捕することが求められるのです。

一般に公安警察と呼ばれるそのような警察活動は、公安調査庁や警察の一部の部局が所掌していて、共産党幹部宅の盗聴事件や宗教団体の内偵などによって、ごく稀にマスコミの報道を通じて国民に知られているところです。

共謀罪が成立すれば、その「厳正な運用」のために各階層の警察機構に「盗聴」「盗撮」「内偵」「潜入」を捜査手法として常用するセクションが設置されることになるのです。その監視対象は、国民や市民の言論を含むあらゆる活動です。法律に明記された「国際的犯罪組織」だけが監視対象なのではありません。なぜなら、それらの組織は非公然秘密組織なのであって、だれが構成員であるかが分らないからであり、また一般に知られていない組織があるからです。

だれがいつなにを共謀するのかわからない状況で、警察には犯罪を行う前に犯人を逮捕することが要求されるのです。

共謀が行われたことを察知できずに犯罪が実行されれば、警察は大いにその無能ぶりを非難されることでしょう。その結果、警察の監視対象と監視方法は際限なく拡大し、結果として国民そして市民の活動や言論の自由は限りなく侵害の危機にさらされることになります。共謀の事実の監視は、いずれ共謀の可能性の監視に拡大し、特定の団体や個人に対する予断に満ちた犯罪の予測へと展開することは明らかです。
これこそ、日本において戦前に国民の自由を徹底的に抑圧した治安維持法と特別高等警察(特高)そして思想検事の構造そのものであることを忘れてはいけません。

冤罪 それが怖い

現在の法体系は、罪刑法定主義を前提に厳密な証拠主義をとっています。あらゆる犯罪は本人の自白のみでは犯罪とされず、他人の証言もそれを裏付ける物証なくしては基本的には有罪の決定的証拠とはならないとされてきたのです。それらの原則は、前にも述べたように中世の魔女裁判への真摯の反省から生み出されたものであり、日本においては戦前の自白偏重の捜査方法への反省が基礎となったものでした。

共謀罪の特質の一つは、犯罪が行われる前、すなわち物的証拠が存在しない段階で犯罪が成立することにあります。共謀罪は、その性質上からごく特殊な場合を除いて物証が存在しない犯罪なのです。そこにあるのは、ある人々が犯罪を行おうと「話し合った事実だけ」なのです。

基本的に記録が残らない「話し合った事実」があったことを証明することは極めて困難です。話し合った当事者の自白・密告か、たまたまそこに居合わせた第三者の証言だけが、その事実を証明することになるからです。それは同時に「話し合った事実」で起訴された人が、その事実がないことを証明することが極めて困難であることも示しているのです。

かねて目を付けて監視や協力者の潜入による内偵を続けてきた特定の団体に対して共謀罪を適用するとき、盗聴による録音テープや協力者による証拠書類など、いくつかの物証が確保され、関係者による証言もあって、その犯罪を立証することは比較的容易であることでしょう。

しかし、もし警察が予断に基づいて、あるいは功をあせって逮捕をした場合に、その冤罪を、真に共謀により犯罪を準備していた場合と区別することは全く困難なのです。
警察が描く構図や事実、それを補強し立証する協力者による証言。それらが、事実があった場合と区別できないことは決定的に重要で深刻です。

現実に犯罪を準備していた者が、罪を逃れるためにそのような事実はないと嘘の供述をすることは一般に予想されます。長期間の勾留や拷問による圧迫によって偽の供述が作り上げられることも歴史がよく教えるところですが、それを覆すためには科学的論理性や物証が決定的に重要です。「証拠なきところ犯罪なし」これこそが歴史に学んだ近代刑法体系の貴重な教訓にほかならないのです。

警察により共謀罪を捏造されたとき、その被疑者にはその冤罪を晴らすための科学的論理も物証も一般にないことでしょう。いつ共謀したのか、なにを共謀したのか、事実がない以上それが「ない」ことを証明することなどできないからです。裁判の過程である特定の「日時」「場所」が示されることでしょうが、運良くアリバイによってその事実がなかったことが証明できても、証言者の記憶誤りによって別の「日時」「場所」だと修正されるなら、決して「事実がない」ことなど証明はできないのですから。

メンツにかけて「犯罪の事実」を「証明」する警察機構=国家を前に、一国民はあまりに無力です。

結果として、ごく一般の少国民にとって、警察に「目を付けられない」ことこそが最も賢明な処世術となるのです。

主人であるべき国民が、国家の顔色を窺うような国には住みたくないものです。

|

« 105円の本達:景山民夫「モンキー岬」 | トップページ | BraveLife:本田美奈子は永遠に »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/46036/2769169

この記事へのトラックバック一覧です: 日本が危ない:共謀罪は絶対に危ない3:

» マスコミの行方「ルポ改憲潮流」 [再出発日記]
昨日の続きです。今年3〜5月にかけて、共謀罪が国会にかけられそうになり、実際にかけられ、審議され、一般的な観測ではそのまま強行採決されそうになっていたとき、東京新聞等一部を除くほとんどの新聞は「沈黙」を守っていた。特に、朝日新聞は教育基本法や国民投票法は...... [続きを読む]

受信: 2006/07/28 00:03

» 滑稽さを、滑稽さと考えられない滑稽さ [逍遥録 -衒学城奇譚-]
TBSの放送免許剥奪陳情とやらの、ネット署名をやってるヒトたちがいる。 「報道の在り方を考えるインターネット有志の会」とか云うヒトたちだが、集まったら総務省に送るらしい。 スゴイことだッ!て鼻息荒くしてる連中もいるが、噴飯モノだ。アホくさいので、リンクはし... [続きを読む]

受信: 2006/08/01 00:44

« 105円の本達:景山民夫「モンキー岬」 | トップページ | BraveLife:本田美奈子は永遠に »