« 日本が危ない:共謀罪は絶対に危ない4 | トップページ | 105円の本達:沢木耕太郎「深夜特急」 »

2006/08/24

日本が危ない:共謀罪は絶対に危ない5

国際テロを防ぐためには
 共謀罪の新設を提案する政府は、あくまで国際テロを防止するためであると、その理由を説明する。真の目的を国民に示すことなく、何となく納得してしまいそうな説明をするのは、誠に不誠実だと言わざるを得ないが、最近では常套手段となっている。少し前に話題となった「個人情報保護法」は、実は「民間における個人情報管理制限及び漏洩禁止法」であるし、「国民保護法」に至っては、その内容は「戦時における個人の緒権利の制限法」に他ならない。さすがに、共謀罪新設法については、適当な名称が見つからなかったらしいが、内容は「各種犯罪の共謀を新たに犯罪とする刑法等改正案」である。
 最終回となる今回は、現在提案されている共謀罪新設では国際テロは防止できないことを前提として、国際テロを防止するための法整備について対案を提案することとしたい。

国際テロ防止の仕組みとは
 国際テロとは、2国以上の範囲において企画・実行されるテロ行為である。テロの実行は1国内の場合も複数国に及ぶこともあるが、その実行組織は基本的に複数国に股がって組織されており、1国の警察機構では有効に取り締まりが行えないことから、国際間の連携強化を図ることを目的に条約が締結されることとなった。
 政府が意図的に説明を避けている点として、条約の主眼は共謀罪の新設にあるのではなく、むしろ共謀を罰することを法定するにあたっては各国の法制度に反しない限りとの旨が特に留保されていることがある。ご存知の方も多いように、各国の刑法体系は多様であり実行行為のみを罰することを原則とする国(日本もそうである。)もあれば、予備・陰謀までも網羅的に犯罪とする国もある。条約文案の詳細な検討過程は不明であるが、実行行為のみを刑法犯罪とする西欧諸国から留保条件が付されたに違いない。よって、実は共謀罪を新設しなくても同条約の批准は可能であると、条文解釈上は推測される。
 では、国際テロを効果的に防止するための仕組みはどうするべきであろうか。

国際テロ監視機構の新設
 国際テロを事前防止するためには、各国間でテロに関する情報を効率的に交換し連携して対応するための常設機関の設置は不可欠である。そのような機構の新設は、同条約には含まれていないが、日本が本心から国際テロ防止に取り組もうとするならば、常設機構設置の条約改正案を提案するべきである。
国際テロ監視機構(仮称)の機能
・条約加盟各国から提供される情報の整理と分析
・加盟各国への国際テロ情報の提供
・国際テロ団体の認定と統一対応方針の決定
・独自での国際テロ情報の収集

国内法及び制度の整備
 
国際テロ監視機構と連携した、国内での監視取締活動を一元的に行うための組織が必要である。ただし、組織を新設する必要はなく公安調査庁を組織変更することで対応可能である。国際規模で活動するテロ組織の監視活動と、国内団体を監視することは基本的に差異はない。むしろ、国内団体が外国の団体と連携してテロ行為を行うことのほうが現実的であり、可能性が高いことからも、公安調査庁を「テロ監視防止機構(仮称)」などに改組したうえで、国会の直接の管理下におくことが良いと思われる。
 テロ防止のための新たな法整備は、基本的に必要ない。破壊活動防止法(破防法)の枠組みをそのまま利用して、団体指定に係る手続きについて国際テロ監視機構が認定した団体を指定団体と看做すように改正することで、充分に組織犯罪を監視することが可能である。破壊活動防止法はその制定過程で、暴走することのないよう慎重な手続き規程が設けられた。しかも、所管が警察ではなく独立した公安調査庁とされたことで、警察官僚には潜在的な不満があるようである。しかし、国家の安全を脅かすような国際テロであるからこそ、国民的コンセンサスの元で国民が信頼できる組織でこそ、その対応を図ることが重要なのである。
 間違っても国際テロに名を借りた冤罪事件など発生してはならないし、テロ防止を名目とした国民の思想弾圧が行われてはならない。
 国際テロを防止するためには、まず団体を特定し公表することである。その団体に加盟することが犯罪であることを広く知らせなければならない。その上で、加盟したこと又はテロ行為に着手したことで、罪を問う手順が重要である。いくら国民を徹底的に監視してもテロは防止できないことは、歴史が証明している。テロは、実行行為に対する厳罰による抑止するしかないのである。そして、テロに及ぶような不満を民主的手続きにより解消するべきなのである。(徹底した話し合い、その長く地道な積み重ねによってイギリスはアイルランド問題をついに解決した!)

通信傍受及び盗聴

 憲法は通信の秘密を保障する。しかし、情報伝達管理技術の進歩はその範囲をあいまいにしてしまった。インターネットやメール、ブログは憲法上の保護を受けられるのか。これは立法的解決を図るべき課題である。
 例えば、多くの人が自由に通行する道路上で、国際テロの共謀を大声で行う犯罪者は、制服の警官を警戒するだろう。もし、通行人の通報によって警察に逮捕されても、その行為は許されるべきであるように思われる。(もちろん、共謀が犯罪とされるならばだが) しかし、あるマンションの一室でそれが行われたとして、一斉に逮捕が行われたとしたら、それが事実であるかどうかは至って不透明である。言い替えれば、警察によって犯罪が捏造される怖れは否定できない。
 もともとが1対1の通信を基本とするインターネットの世界において、マンション内での会話と同様に、その内容は保護されるべきものであると考えられる。
 通信の秘密の保護は、権力者=為政者が常に正しくなく、圧政者や独裁者であることも少ないないとの歴史の教訓によるものである。そこには、国民に正義があるときは、為政者は倒されるべきであるとの哲学がある。為政者にとって好ましからざる事であっても、正義のための行いは保護されなければならないとの信念が、通信の秘密を保護し革命を正当化するのである。
 したがって、憲法の通信の秘密規程は、それを現在の情報通信手段にも適用されるよう拡大されるべきである。一方で、現行法制度上の犯罪が実行された場合には、速やかに犯人は逮捕され刑罰に処せられなければならない。法の改廃が充分に民主的な手順で保障されているならば、それで充分なはずである。

 次期国会での共謀罪新設法案の討論過程には、充分な注意をはらっていこうと思う。この稿を執筆するにあたって多くの国会議員のブログを確認させていただいたが、共謀罪について何らかのコメントを掲載しているものは、ほとんどなかった。
国会議員は党員である前に、選挙区の国民の「代議員」であるはずである。党が決めたことに、自ら考えることもなく賛成するのであれば、こんなに多くの議員など必要ない。自分がなにに賛成しなぜ賛成するのかを考えることは可能なはずである。選挙における有権者の信託に応えるための、議員諸兄の自己研鑽を強く求めたい。
次は参議院選挙である。共謀罪に関する認識と公約を確かめて投票を行うべきであることを、読者の皆様には訴えたい。

|

« 日本が危ない:共謀罪は絶対に危ない4 | トップページ | 105円の本達:沢木耕太郎「深夜特急」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/46036/3019700

この記事へのトラックバック一覧です: 日本が危ない:共謀罪は絶対に危ない5:

» キョーボー罪 [飛語宇理日記]
共謀罪「法原則に合わぬ」 政府、99年に主張 2006年10月02日06時22分 犯罪を話し合っただけで罰せられる「共謀罪」を新設するため、「国際組織犯罪防止条約を批准するためには共謀罪が必要」と説明している政府が、7年前、国連の同条約起草の会議では「共謀罪は日本の法..... [続きを読む]

受信: 2006/10/05 20:39

» 【今一番の関心事】RSS、リンク・トラックバック、共謀罪 [散策]
国会共謀罪審議に備えて、Topを変更しました。Topの写真も、下記の写真にしようかとも思いましたが古いのでやめておきます。今、RSSリーダーに約100個のブログを登録させていただいて、拝見しています。といっても、ちゃんと拝見などできていません。メリットは、やはり多くかたのブログを拝見できること。デメリットは、RSS対応していないブログを見に行く機会が減ってしまうこと、更新情報に注意が行くので、過去エントリーのコメントに目が行かなくなってしまうことです。... [続きを読む]

受信: 2006/10/05 21:19

» 朝日・東京新聞の共謀罪スクープに関する解説〜その3 [情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士]
日本が国際組織犯罪防止条約の協議段階で提案した第3のオプション,それは,日本でも刑法にある幇助,教唆,共同正犯,さらに,判例上認められている共謀共同正犯だった。条文は,次のとおり。 (iii) Participation in acts of an organized criminal group that has the aim of committing a serious crime, in the knowledge that the pers... [続きを読む]

受信: 2006/10/06 01:41

» 07参議院選挙、統一地方選挙に対する基本の考え方と態度 [未来を信じ、未来に生きる。]
 06年11月には野党5党の統一候補が沖縄知事選を闘います。政党支持率の世論調査でいえば、自民・公明が圧倒的ですが選挙の得票数は必ず世論調査を裏切るというのが選挙史の事実です。  今、ジリ貧なのは自民・公明の議員とその野合のほうであって、野党は団結して与党を叩き潰し、有権者の選択肢から自民・公明を消させる運動をする時です。  その上で、どの野党か、ということです。自民・公明だけはありえないという運... [続きを読む]

受信: 2006/10/06 09:47

» こりゃ廃案にするしかあるまい、共謀罪 [かめ?]
共謀罪:創設、攻防再び 条約批准に必要か(毎日新聞) これだけボロボロと、ボロが出てきちゃ、廃案にするしかないでしょう。 杉浦正健前法相は先月、英国の旅客機テロ未遂事件を例に挙げて「共謀罪がなければ、日本ではこの種の事案を検挙できない」と発言した。....... [続きを読む]

受信: 2006/10/09 15:40

» 国会閉会し、決意を新たに [競艇場から見た風景]
心配していた「共謀罪」は審議入りせず継続になった。最低最悪の国会で唯一の救いだった。参院選や統一地方選を控えた来年の通常国会では、共謀罪法案の審議は困難との見方もあるそうだが、あくまでも継続扱いであって、廃案でない以上、自民・公明極悪政権は「共謀罪」審議..... [続きを読む]

受信: 2006/12/20 17:56

« 日本が危ない:共謀罪は絶対に危ない4 | トップページ | 105円の本達:沢木耕太郎「深夜特急」 »