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2006/10/18

日本が危ない:献策十講「年金・医療改革」

年金制度改革と医療改革は、国の根幹を論じるなかではごく軽いテーマと言わざるを得ない。しかし、この処理を誤れば間違いなく安倍政権は崩壊するという意味では、あえて改革案を呈示する価値のある重要なテーマである。
その詳細で緻密なデータ収集と分析によって、現行年金制度がごく近い将来崩壊することは霞ヶ関(中央官僚群)では随分と前から「常識」であった。同様に医療制度改革と言う国民負担の急増と医療水準の低下を両輪とする制度改悪も既定の事実であった。それが、今日に至るまで放置されたのは、利害関係の強い政治家の不当な圧力と官僚群が本来有していた「公徳心」とも言うべき、特定の利害より国民全体=国家の総合的利益を優先するという気高い志が摩滅してしまったためと言わざるを得ない。

この両制度の改革を考えるとき、現行制度で利益を受けているのは誰かを良く理解し、国民総体の利益を最大化するべく全く新たな制度を設計する必要がある。

公的年金制度の廃止

誰でが年をとり働くことができない時がくる。その時、誰がその面倒を見るのかということが公的年金制度の基本にある。資本主義社会が一般的になり、共産主義の用語で言う「無産階級」が発生したときから、そも問題は資本主義国家の構造的な弱点であった。自給自足を基本とした社会にあって、老いの問題は家族の問題であり、地域共同体の問題であった。そこに国家の役割はない。大量の労働者を企業が必要とし、都市に労働者世帯が集住するようになって、年老いた労働者の生活の保障は行政的課題になった。初期の資本主義国家は、それを個人の責任とした。結果として、多くの働けなくなった労働者は貧困のうちに健康を損ね死んでいった。それが、労働者のモラルを低下させ潜在的社会不安を醸成し共産主義が台頭するに及んで、資本主義国家が選択したのが、今に続く福祉国家化である。子を産み育て、安心して老後を暮らすことを、共産主義国家も資本主義国家も約束した。その意味で、20世紀は幸せな世紀であったと言えるだろう。

戦後の高度成長のなかで日本もまた高度福祉国家となっていった。年金の支給額は増額され、支給範囲も拡大された。年金財政は健全だった。当然である。戦後生まれの団塊世代が急増し保険料を納付する一方で、給付を受けるべき高齢者は戦災もあってごく少数に過ぎなかったのだから。
年金制度とは本来一種の保険である。自ら支払った掛金を老後に受け取るのが基本である。膨大な団塊世代が掛金を払う以上、数十年先にはそれに見合った年金を支給するのが原則だったのである。にも関わらず、その基本的な仕組みを無視して、年々入ってくる年金原資は、ろくに掛金も払っていない高齢者への手厚い年金給付に充当されたばかりか、意味のない事業や施設建設・運営に浪費されてしまったのである。その当たり前のことが行われていないことを放置したのは、明らかに政治の怠慢である。その意味で、担当官庁はおろか政治主導しても年金改革を成功させることは不可能である。行政はもちろん、政治の無責任を国民は許していないのである。
公的年金制度を廃止する。それが唯一の解決策である。既に給付を受けている高齢者に対する給付は政府の責任において継続する。すなわち、税負担によって賄う必要があるのは言うまでもない。しかし、そのための財源は、当事者でもある高齢者が実は最も多く保有する金融資産と固定資産に対する臨時特別税で賄うのである。長くとも30年ほどで公的年金廃止に伴う国の年金継続義務は完了するはずである。
現行の各種年金制度の現役の被保険者については、破産会社と同様に債権者として清算を行う。すでに納入した掛金額を最低補償として総ての資産を清算して保険契約を解消する。掛金額の総額を下回る資産しか有していない場合には、国が不足額を補償すべきである。
公的年金制度を全廃したうえで、民間年金保険を完全自由化するのである。年金制度は加入の自由を含め国民一人ひとりの選択と判断に任せれば良い。生命保険や自動車保険と同様に、多くの労働者は自らの一生を考えて個人年金保険に加入するに違いない。生命保険と同様に、税制上の控除制度などにより、加入を間接的に促進すれば良いのである。もちろん、童話の「アリとキリギリス」のごとく年金未加入のまま老後を迎える生活破綻者も一定程度は発生することは避けられない。その時、それを初期資本主義国と同様に放置するのか、生活保護制度などにより保護するのかは政策的選択の問題である。放置すれば社会不安が、手厚く保護すれば未加入者を増加させるからである。放置をしないとの政策的選択をするなら、最低限度の生活を補償する老齢給付金を全国民一律に交付すれば良い。租税を原資とする老齢給付金と任意の個人年金への再編が、現時点での現実的解決だと思われる。

公的医療保険制度の廃止

医療保険制度の改革も基本的には年金制度と同様である。基本的に世代間の転嫁を考慮しなくて良い医療制度は、より純粋に保険制度として運用可能である。一見複雑に見える現行制度の問題だが、突き詰めれば医療機関・製薬会社そして患者が、どのようにサービスを交換するかのルールの問題に過ぎない。そこに、保険制度を運営している公的機関の利害が加わって議論が解りにくくなっているだけである。
すでに多くの医療保険が民間保険会社で提供されている現状で、全国民一律の公的医療保険制度を維持する必要性はない。どの程度の医療行為にいくらの対価を支払うべきか、どの薬をいくらで購入するかは、本来は市場原理に任せれば自然と決定されるものである。それを強力な圧力団体でもある医師会や製薬会社の利益を損なわないように決定していることが、医療保険の給付を増大させ、被保険者の国民の負担を増加させているのである。したがって、公的医療保険制度は全廃して総てを民間の医療保険に任せることで、ほとんどの問題は解決されるのである。
年金と同様に医療保険に加入しない、または加入できない国民の問題は残る。これは、基本的には福祉の問題である。保険に加入しないことが有利にならないよう、また、加入できない低所得者が医療に欠けることがないように、制度設計することは、さほど困難な課題ではない。生活保護制度と税法上の控除制度を適当に調整すれば、未加入者は生じないからである。
根本的な問題は、行政が、医療機関や製薬会社の利益のために、国民に自由に決定される場合以上の費用を強制的に負担させている現行制度にあるのである。公的医療保険制度の廃止、それこそが唯一で最良の解決策である。

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