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2007/05/25

BraveBook: D.A.ノーマン「誰のためのデザイン?」

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論

普通に生活をしていて、普通に本屋などにいって、何となく手にすることが「ない」本があります。
新宿や神保町の大書店で特にあてもなく売り場の「平積み」の本を見て歩くのは、楽しいものですが、どうしても手にするのは今流行しているものや、お気に入りの作家のものになりがちです。
時間とお金が無限でない以上、なかなか未知の一冊を購入することはできません。
そのためにも、良い書評サイトを見つける必要があると思うのです。

「誰のためのデザイン?」(THE PSYCHOLOGY OF EVERYDAY THINGS)は、分野で言えば基礎心理学の棚に置かれている一冊ですが、内容はごくごく一般の人々を対象とした実に役に立ち魅力的な「学術書」なのです。
日本版の発行は1990年、30年近くも前の著書なのですが、今読んでも少しも古びることなく、実際の生活に基礎心理学(正確には認知科学)がどう役立つのかの一端を教えてくれます。

テーマは、解りにくく事柄や使いにくい物が、なぜ解りにくく使いにくいのかの原因を明確にすること。そして、どうすればよいのかを具体的に示すことです。

写真やイラストを使って示される実例は、どれもが「まったくそのとおりだよ」と共感を感じるものばかりです。
どのスイッチがどのコンロのものか分らないガスレンジ、何度読んでもよく解らないビデオの説明書、押すのか引くのかさえ分らない玄関ドアなどなど。

著書は丁寧にかつ的確に問題点を明らかにし、解決する方法を具体的に示して行くのです。

この本を読んで多くの人は、現在のハイテクとデザイン優先の物やシステムを使いこなせないのが、自らが「時代の乗り損なった」または「時代から取り残された」年寄りではないことに気づかされるのです。
悪いのは使う人ではなく、製品そしてデザイナーなのだと言う事がよく解るのです。

この本で最大の非難を受けているのが、当時のパソコン。
そうウインドウズが採用される前のMS-DOSパソコンなのです。
その使い難さと解り難さは、当時パソコンを使っていた方ならご承知のとおりですが、著者はその原因と理由を実に的確に分析し指摘しています。
今読んで、本当に凄いと思うのは、それを改善するための具体的指摘のあまりに的確なことです。
ウインドウズ95が発売されるのは、原著が発行された7年後です。
本書に書かれた改善案は、現在のXPに至るまでのパソコン用OSの進化を先取りしていると言って良いのです。
(実際には、マイクロソフトの関係者が本書の指摘を踏まえながら、技術と価格の厳しい制約のなかで、改善を図ってきたのが真実なのでしょうが)

たとれ基礎心理学などという地味な学問さえ、現実の生活をより良くする為に価値があるのだと本書から教えてもらいました。
学問は学問のためにあるのではない。
すべての人々の生活をより良く、より快適にするためにこそある。
いかにもアメリカ的な学問哲学を感じます。


誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論

著者:ドナルド・A. ノーマン,D.A. ノーマン
販売元:新曜社
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