07参院選:隠された争点「ホワイトカラーエグゼンプション導入」
「残業代ゼロ法案」としてマスコミに大々的に取り上げられたホワイトカラーエグゼンプション導入。労働基準法の改正として政府=自民党が導入を図っている新しい労働の仕組みです。
参議院選挙で争点化することを避けて法案採決が見送られましたが、次回国会に再提出されることが確実視されています。
ホワイトカラーエグゼンプションとは何か?
「残業代ゼロ」では不正確ですが、日本語化されていないことからも明らかなように従来の日本の労働法制では想定されていない米国直輸入の制度です。
現行の日本の労働法制では、労働者は1日あたりの労働時間が8時間に制限されています。それを超えることは原則として禁止されていますが、一定の条件のもとで割り増し賃金を払うことで、それ以上の時間働かせることが出来ることとされています。
ホワイトカラーエグゼンプション制度とは、その制限をなくしてしまう仕組みなのです。
「ある一定の労働の成果」に対して「一定の対価=賃金」を払うことを「使用者=経営者」と「労働者=サラリーマン」が「合意=契約」することで、労働者は労働時間に関する保護や制限を一切受けなくなる仕組みなのです。
具体的に考えてみましょう。
あるセールスマンがいます。月あたりある商品を100個売ることを条件に月給30万円で雇用契約を結んだと仮定します。
ホワイトカラーエグゼンプションが適用されると、そのセールスマンは月に何日出勤するかも、何時間働くかも一切の制約を受けません。月100個のノルマさえ果たせば例えば7日だけ働いて、あとは遊んでいても良いのです。
一方でノルマが果たせなければヒタスラ働き続けるしかありません。休日も夜間もなく商品を売り続けなければなりません。何しろノルマを果たせなければ雇用契約を破棄=クビになるわけですから。
ちょっと考えると真面目で有能な労働者にとっては何の問題もなく、むしろ望ましい感じさえする仕組みです。
残業代ゼロなのは無能力で怠惰な労働者だけなのですから。
しかし、よく考えてみると有能な労働者にとっても決して問題がないとは言えないことに気がつきます。
例えば、ノルマがどんどん引き上げられて行ったらどうでしょう?
7日で達成できるノルマをあまりに低い目標だったと会社は考えて、次回の契約時には3倍のノルマが課される事は容易に想像できます。
あるいは、賃金が引き下げられるかもしれません。
何しろ7日しか働いた実績がないのですから。
法案を提出した厚生労働省は対等な立場で労使が交渉するのだから、そのような一方的なことは起きないと説明します。
しかし、実際に有能な労働者ができる選択は「条件の引き下げに応じる」か「その仕事を辞める」だけしかないのです。
それは労使関係が基本的に不平等であることの当然の結果なのです。
今や古びてしまったマルクス経済学の用語で説明すれば、使用者=資本家が生産手段を独占して少数なのに対して、自らの労働力以外になんの資源ももたない労働者=無産階級は多数いるからに他なりません。
そのような条件下では平等で公平な交渉は決して成立しないのです。現在の労働者保護法制はそのような不平等を前提として歴史的に労働者が獲得してきた貴重な権利と言ってよいものです。
使用者にとって、代わりの労働者を見つけることは容易なのに対し、労働者にとって現在の職を失う不利益は大きく、次の職が見つかる保証はありません。
ましてや終身雇用が定着し自由で健全な求人求職市場の形成が遅れている日本で、失業することは多くの労働者にとってあまりに大きなリスクなのです。
住宅ローンが残っている、子供の学費がかかるなど、ほとんどの労働者が自由に失業することができないのが日本の現状なのです。
結果として、ホワイトカラーエグゼンプションの導入により多くの労働者の労働条件は限りなく引き下げられていくわけです。
そのような抜本的な労働制度の変更を、経営者の意向だけに沿って安易に導入しようとしてしまう政府=与党を労働者は信頼してはいけないはずです。
誰が労働者の利益を代表しているか、それが重要なのです。
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