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2007/08/26

新献策十講:(独)国家政策立案機構を創設せよ

今回論じようとするのは公務員制度改革です。
単なる天下り規制や給与引き下げに矮小化されて報道される傾向にある公務員制度改革ですが、さまざまな立場から提案されている改革案を詳細に読んでみると遙かに大きな改革の提案がなされていることに気がつきます。

「民間に較べて高過ぎる給与を引き下げ、優遇されすぎている勤務条件を解消しろ」などと言う、一般国民受けを狙った提案は公務員制度改革の「真の狙い」の目くらましではないかと思えるほど、明治時代以来の官僚制度の解体を図るとしか思えないものが多々あります。

代表的な抜本的な改革事項は次のものです。
・各省庁別に事務次官を頂点としてピラミッド上に構築される「官僚機構=政策立案機構」を解体する。
・政策群の単位を「省庁別」から、より広い「分野別」に変更する。
・政策の実質的決定権者を官僚トップから政治家に変更する。
・メリットシステムにより基本的に終身雇用が保証されている公務員を、政治任用を前提とするスポット職員化する。

いずれも、東大を中心として養成される優秀な人材を中央官庁に集中し、「天下国家の重大事への対応=国家政策の立案実施」を一元的に高級官僚に担わせるという、明治以来の日本の官僚システムを抜本的に解体する提案です。

それら提案の背景には、英米型特に米国型の政策立案システムへの転換があるようです。
広く知られるように二大政党制が定着し、立法府と行政府の独立性が高い米国では、国家政策の立案は名実ともに立法府である連邦議会が担っています。ホワイトハウスを頂点とする行政機構は、大統領が政治任用する広範な高級官僚スタッフとメリットシステムにより終身雇用される一般職員から構成され、基本的に行政事務を実施する権限と責任のみがあり政策立案には関与しません。
具体的には、連邦議会で多数党に属する各連邦議会議員のスタッフが政策立案の実務を担います。それぞれの議員は出身や支持母体を背景とした得意分野を持ち、独自に政策を立案します。
各議員の政策立案スタッフは膨大です。法律的には臨時雇用と位置づけるべきスタッフも多く、外部シンクタンクや学術機関から政策を丸ごと「買い取る」ことも日常的に行われています。その費用は莫大ですが、任期中いかに多くの「政策」を実現したかが問われる米国議員にとって、それは本質的仕事そのものなのです。

わずか数人の公設秘書しか持たない日本の国会議員とは大きく異なります。与野党問わず、なぜ日本の議員に政策スタッフが不要なのか?
「国家のあらゆる政策は、霞ヶ関の官僚機構群が生み出している」それこそが答えなのです。

日本の政治システムを米国型に転換することは可能か?
答えは「可能」です。
では、それが望ましいか?
答えは「望ましいとは言えない」です。

米国では、大統領選挙があるたびに行政府のスタッフ、日本で言う高級官僚から中級官僚が一斉に交代します。そのため、政権交代の度に行政機関の責任者も交代し、行政の一貫性は極度に失われ責任は曖昧になります。見方を変えれば、行政の責任は公務員が負うのではなく、選挙に代表される政治過程を通じて政治家が負うものなのです。
日本に置き換えれば、年金記録紛失問題は事務官僚である厚生労働省の長官や局長が負うのではなく、政治家である大臣や副大臣、政務官が負うことになります。
必然的に責任の追及は、司法手続きに従い過去に遡って厳格に行われる必要があり、それが抑止力となって適正な行政執行を担保する仕組みなのです。これは、古代ローマ帝国の仕組みを援用しているものと言われています。
司法の独立性や迅速性が劣る日本において、そのような仕組みが有効に機能するかは疑問です。

もう一つの問題は、連邦議員がそれぞれの利害に従って立案する政策が、基本的には相互に独立しており政策相互間が十分に調整されていないことです。
あくまで相対的ではありますが、霞ヶ関の中央官僚群が立案する政策が各省庁間の擦り合わせ作業を通じて全体として高度に調整されているのに比して、米国では連邦議会での審議により「近視眼的」「現実的」に整合性をとるに過ぎないことがあります。
その結果として、政策効果が相殺されたり、無駄が生じたり、あるいは一貫性が失われるなどの弊害が大きくなることは問題です。

ではどうするか?
霞ヶ関の中央官僚群を省庁毎に独立行政法人化することを提案します。
もちろん、中央省庁と言えども行政事務を実施するだけのセクション・職員は存在します。地域機関や地方公共団体に通達し連絡調整し統計資料を作成するような部門です。これらは分離して、本当の意味での中央行政府に再編成します。
中央官僚群の政策立案部門の割合を正確に把握した資料はないようです。しかし、そのアウトプットから推測するに霞ヶ関中央官僚群の8割以上は、実質的に政策スタッフと断言して良いでしょう。

まず、各省庁毎に政策スタッフと実務スタッフを区分します。各省庁の政策スタッフ群は現在の組織構成のまま、独立行政法人とし国家行政組織から分離独立させます。
独立行政法人のトップは、内閣が任命するのが良いでしょう。

独立行政法人は、国家レベルの各種の政策を立案し販売することです。
主な販売相手は、与党自民党・野党民主党です。将来的には発展途上国や欧米先進国に「政策パッケージ」を販売することも視野に入れることになります。
旧国鉄が民営化されて「新幹線システム」を世界を相手に販売していることをイメージすると解りやすいでしょう。
国家政策を販売し、その収益で「政策スタッフ=旧官僚」を雇用する構造です。

従来の各省庁大臣は実務スタッフが構成する「新省庁」のトップとなります。
その役割は、日本国の立場にたって「より良い国家政策」を「より廉価に」購入することです。購入費用とはすなわち国会で決定される予算に他なりません。安く買うことで税金の負担は小さくなります。
購入先は自由に選定できます。旧中央省庁である独立行政法人だけではなく、欧米のシンクタンクからも購入できます。そこには「競争」が発生します。

このように整理すると、現代日本の官僚システムの問題点がよく解ります。
国家が内部機構として政策立案スタッフを独占しています。その費用は公務員の人件費として税金で無条件で賄われています。与党は国家公務員である政策立案スタッフを独占的に利用して自らの政策立案に利用できます。
逆に言えば、国家政策立案スタッフである中央省庁の官僚は、自ら望ましいと思うところ政策を、与党の支持さえ得ていれば身分上の保証を得ながら、税金によって自由に立案し実施できると言うことです。

適正な「競争」は「より良い政策」を生み「より低廉な価格」を生みます。
国家機構そして政策における「新自由主義」の実現こそが、この提案の究極目標です。

最後にもう一度提案を整理します。
・中央省庁は、省庁別に独立行政法人にする。
・中央高級官僚は、一律に独立行政法人職員に移管する。
・各国会議員は政策スタッフを雇用し、国家政策を購入する主体となる。
・各国会議員は、予算編成過程を通じて自らの国家政策の実現を図る。
・政府=議員内閣は、予算により決定された国家政策を購入する主体となる。
・行政府は、政策実施を行うだけの機関にする。

すぐに忘れられてしまうでしょうが、「民主党が各省庁に局長級の官僚が法案の説明にくるよう要請」と最近の新聞記事に載りました。
現代日本の政策立案過程をよく表していますが、参議院第一党の政治意識としてはまことに心細い限りです。
官僚群に政策立案を独占させている限り、明治維新から一貫している「日本レジューム」からの脱却などできないことを認識していただきたいところです。

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