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2007/12/08

BraveBook:「満州とは何だったのか」

満洲とは何だったのか

      

買ったきっかけ:
戦前レジュームを総括する。そんな意図で何冊かを読んできましたが、戦前日本を考える上で欠かすことができないのが「満州帝国」です。いわば戦前日本の鬼っ子のように思われている満州帝国について客観的・総合的に書かれた書籍は知る限り多くはありません。その軍事的側面のみであったり、都市計画的側面のみであったり、多分に郷愁と不可分一体の情緒的ものであったりと。この本は目次で見る限りは満州そのものを総合的に理解しようとする意図が明確なのです。

感想:
満州と戦前日本の関わりは一般に思われているより随分と長い、それが第一の感想です。明治末に日本が韓国を併合するとともに、満州は事実上日本と経済的軍事的に強い関係を持つようになります。敗戦まで30年以上あります。満州帝国の成立は昭和9年、そこからでも敗戦による消滅までで10年。
何となく第二次世界大戦直前に建国され、あっという間に消滅したような印象がありますが、実は結構長い歴史を持つのが満州なのです。10年ひと昔。小泉改革がわずか5年であったことを考えるだけでも、その30年が日本に与えた影響の大きさを想像できます。

おすすめポイント:
戦前日本が閉鎖的な軍事独裁国家であったとの認識は明らかに誤りです。明治時代に日清戦争・日露戦争に勝利した日本帝国は、従来の日本領土を超越してまさに「帝国」として躍進していたのです。それは地理的事実であり、また日本国民共通の認識でした。明治維新による開国がまだまだ国民の直接経験であった時代、西洋化を果たした日本は西へ南へ北へと勢力圏を拡大していたのです。大正時代から昭和初期、日本人は今よりはるかに国際人でした。多くの経済人は中国・台湾・南洋諸島そしてロシア、アメリカと密接な関係を持っていましたし、一般庶民も今や「日本」である台湾・朝鮮・満州南部、そして国際都市であった上海などに旅行に出かけています。そんな時代の雰囲気を感じられる一冊です。

残念なのは執筆に恵まれなかった項目が多いことです。わずかな記述で過去の「時代」を描ける人は多くありません。結果として、優れた執筆者を得られた項目は鮮明に、そうでない項目は曖昧に「満州」の実像を描き出すことになってしまっています。
それは、未完成のジグソーパズルのように不完全ですが、整理され辻褄があわせれた教科書よりは魅力的なのです。

満洲とは何だったのか

著者:中見 立夫

満洲とは何だったのか

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