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2007/12/31

105円の本達:羽仁進「世界歴史物語」

羽仁進の世界歴史物語—5幕19場のドラマ

世界歴史物語  1994年小学館刊

※文庫化にあたって改題されています。

5日でわかる世界歴史 (小学館文庫)

      

買ったきっかけ:
中学・高校と歴史は苦手でした。遙か昔の人物や遙か遠くの異国の人名や年号を覚えることが求められていたからです。
「なぜ必要なのか?」に答えてくれる教師には、ついに巡りあえませんでした。
歴史が苦手との意識は、コンプレックスとして長く負担になっていました。

感想:
歴史の楽しさを知ったのは、司馬遼太郎の小説です。歴史を舞台に活躍する教科書には登場しない人々は様々な人生を生きていました。ある人物が出会う出来事や困難は、今の困難を考えるヒントに満ちていました。
現在の困難の解決のヒントは、すべて歴史の中にある、との西欧歴史主義の意味が初めて理解できました。
歴史物は現在では最も好きな分野の一つです。

おすすめポイント:
世界史の教科書には登場しない歴史が学べます。西欧中心の歴史観とはひと味違った歴史物語です。、ギリシャローマを源流にしていながら、長い停滞(後退)の後ルネッサンスで突然花開く西欧文明の不自然さ。その不思議が氷解しました。イスラムやインド、ロシアなど日本の歴史教育から欠落している歴史がそこにあります。
博識な著者が歴史を縦横に理解する。司馬遼太郎と少し似ています。
最後の1章がやや説教くさいのが難点なのですが。老境にある著者の現代文明への危機意識がそこにあります。

5日でわかる世界歴史 (小学館文庫)

著者:羽仁 進

5日でわかる世界歴史 (小学館文庫)
 

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2007/12/15

105円の本達:林望「リンボウ先生ディープ・イングランドを行く」

リンボウ先生ディープ・イングランドを行く (単行本)
  林 望 (著)

リンボウ先生ディープ・イングランドを行く

久しぶりに手に取った105円本。
林望氏の98年の単行本です。

かの「イギリスは美味しい」で、イギリス好きで軽妙で独特なユーモアのあるエッセイで人気者のなった林望氏なのですが、これはどうもいけません。
明らかに林氏の人気にのっかった一冊。また、そんな安易な企画にのった林氏も悪い。こんなエッセイ本を何冊も出したがゆえに、同氏の人気は今や見る影もなくなってしまっています。

要するに林氏にイギリスの奥地をドライブしてもらってスナップ写真などとって、簡単な文章を添えただけ。ほんとうにそれだけです。

写真は素人写真。素材もそこらで目についたもの。エッセイも高校生の修学旅行の記録なみ。林氏ならではのユニークなイギリス文化論もなければ、ユーモア溢れる文体も見られません。

まことに残念といわざるを得ない一冊でした。




   

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2007/12/08

BraveBook:「満州とは何だったのか」

満洲とは何だったのか

      

買ったきっかけ:
戦前レジュームを総括する。そんな意図で何冊かを読んできましたが、戦前日本を考える上で欠かすことができないのが「満州帝国」です。いわば戦前日本の鬼っ子のように思われている満州帝国について客観的・総合的に書かれた書籍は知る限り多くはありません。その軍事的側面のみであったり、都市計画的側面のみであったり、多分に郷愁と不可分一体の情緒的ものであったりと。この本は目次で見る限りは満州そのものを総合的に理解しようとする意図が明確なのです。

感想:
満州と戦前日本の関わりは一般に思われているより随分と長い、それが第一の感想です。明治末に日本が韓国を併合するとともに、満州は事実上日本と経済的軍事的に強い関係を持つようになります。敗戦まで30年以上あります。満州帝国の成立は昭和9年、そこからでも敗戦による消滅までで10年。
何となく第二次世界大戦直前に建国され、あっという間に消滅したような印象がありますが、実は結構長い歴史を持つのが満州なのです。10年ひと昔。小泉改革がわずか5年であったことを考えるだけでも、その30年が日本に与えた影響の大きさを想像できます。

おすすめポイント:
戦前日本が閉鎖的な軍事独裁国家であったとの認識は明らかに誤りです。明治時代に日清戦争・日露戦争に勝利した日本帝国は、従来の日本領土を超越してまさに「帝国」として躍進していたのです。それは地理的事実であり、また日本国民共通の認識でした。明治維新による開国がまだまだ国民の直接経験であった時代、西洋化を果たした日本は西へ南へ北へと勢力圏を拡大していたのです。大正時代から昭和初期、日本人は今よりはるかに国際人でした。多くの経済人は中国・台湾・南洋諸島そしてロシア、アメリカと密接な関係を持っていましたし、一般庶民も今や「日本」である台湾・朝鮮・満州南部、そして国際都市であった上海などに旅行に出かけています。そんな時代の雰囲気を感じられる一冊です。

残念なのは執筆に恵まれなかった項目が多いことです。わずかな記述で過去の「時代」を描ける人は多くありません。結果として、優れた執筆者を得られた項目は鮮明に、そうでない項目は曖昧に「満州」の実像を描き出すことになってしまっています。
それは、未完成のジグソーパズルのように不完全ですが、整理され辻褄があわせれた教科書よりは魅力的なのです。

満洲とは何だったのか

著者:中見 立夫

満洲とは何だったのか

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2007/12/01

BraveBook:村田裕之「リタイアモラトリアム」

リタイア・モラトリアム―すぐに退職しない団塊世代は何を変えるか

      

買ったきっかけ:
しばらく前から「生き甲斐」「団塊世代」「老い」「隠居」「退職」などをテーマに読んできたわけですが、最後の一冊として「リタイアモラトリアム」を選びました。きっかけは「この本の独特の視点が面白い」とある人から教えてもらったから。

感想:
この本は大きな本屋ではビジネス書の棚に並んでいます。帯にも「多くの事例をもとにシニアビジネスの方向性を提示」とあってビジネスのアイディアを示唆する書き方になっています。
でも、この本は「シニアビジネスの顧客=まもなく退職する人」が読んでも得ることが多い一冊なのです。むしろ、多くの企業や起業家がこの本が示唆するビジネスを始めてもられば、日本の老後はどんどん楽しくなると実感できるのです。

おすすめポイント:
高齢者にとって、日本の現状に何が不足しているのかが、具体的なサービスや施設そしてその背景となるコンセプトまで含めて示されています。キーとなるのは知的興味。その核となるのが大学であるとの指摘は新鮮です。
ところで、この本を読んで感じるのは日本における「プロデューサー」の不足です。人々の潜在的なニーズを把握して、さまざまな企業や個人を組み合わせてシーズ(供給)を創出する能力がある人材です。映画や演劇やテレビの世界では定着している仕組みが、公共的分野や街づくり分野では受け入れる仕組みから不在なのが現代日本の不幸だと思うのです。そのような人材は確かにいます。しかし、その人材が正当に評価され地位を確立することが不可能なのが現代日本だと思います。
経済振興での元通産官僚の堺屋太一氏はその数少ない成功者でしょう。政治でその方向を目指したものの失敗者となったのは大前研一氏。彼の政治改革の秀逸なアイディアはついに実現することはありませんでした。
優秀なプロデューサーは得難い貴重な資源です。そのような人材が正当な社会的評価とそれに見合った報酬を得られる社会が実現しなければいけないのでしょう。
ごく最近まで、日本でその役割は霞ヶ関官僚システム。すなわち、名もなき無名の高級官僚達が担っていたと考えます。官僚が社会的使命感を喪失しつつある今、日本は危機的状況に直面していると改めて認識しないといけないでしょう。

リタイア・モラトリアム―すぐに退職しない団塊世代は何を変えるか

著者:村田 裕之

リタイア・モラトリアム―すぐに退職しない団塊世代は何を変えるか

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