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2008/11/08

BraveBook:アダム・スミス「国富論」

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)

      

買ったきっかけ:
実は最近、書評が少なくなっていたのには理由があります。いわゆる「名著」と言われる書籍を読みたいと思い、いくつかを購入したのです。
中でも、ぜひ読んでみたかったのが、今回ご紹介する「国富論」。
自由主義経済・新自由主義経済政策理論の「原点」と言えるアダム・スミスによる18世紀(!)の一冊なのです。

感想:
大学生のころ「国富論」に挑戦したことがあります。古い翻訳の文庫本であったことや、西洋史に関する知識が乏しかったことなどから、あえなく挫折して、以後数十年手にすることはありませんでした。
書店で2冊組の単行本を見かけたのが数ヶ月前。全くの新約とのことで改めて挑戦です。

上下巻で約1000頁の大著に挑むこと数ヶ月。ようやく読了しました。はっきり言ってなかなかシンドイ読書なのでした。確かに現代日本語として十分に解りやすい翻訳なのですが、200年以上も前のイギリスで書かれたものだけに、時代背景・経済体制から人々の価値観に至るまで異なっていることが主な理由です。時代を超えて読み継がれる書物の多くが小説などフィクションであるのは、それが理由であることを改めて認識します。
経済学・政治学などの書籍は、如何に普遍的な理論書であろうとしても、その誕生した国や時代の制約を完全には排除できないものだからです。それを突き詰めるとき政治論も経済論も「ガリバー旅行記」や「リバイアサン」「ユートビア」などのようなフィクションの世界に到達せざるを得ないのでしょう。
「国富論」は18世紀末のイギリスの書籍であることを積極的に肯定しています。
むしろ、その時代に生きる「ブルジョア」「資本家」「有産階級」の教養書として書かれたものなのでしょう。
その結果「国富論」はベストセラーとなり、徐々に変化する歴史的な時間の流れのなかで、普遍的部分のみが生き残ってきたのだと思うのです。

おすすめポイント:
「国富論」は、現代で言う経済学の教科書とは大きく異なっています。確かに物の生産や労働・賃金・土地・価格、貿易、財政など、現代経済学の領域内のことを論じていますが、その目的は新たな経済理論の確立にはありません。
産業革命後、圧倒的な生産力で世界を席巻しつつあり、後にアメリカ合衆国となる北米植民地を有する大英帝国。その新興ブルジョア層の「教養書」として書かれたものに違いありません。
時代が急激に変化する時期、ある種の指南書が必要となります。
安定した時代には、今日は昨日の延長であり、明日は今日の延長に過ぎません。繰り返しこそが大事であり、革新や変化は時に破滅をもたらす避けるべき行為です。
一方で変革の時代にあっては、明日は不確実で不安に満ちています。信じるに足る確実な指標や客観的な理論が必要となるのです。
アダム・スミスの「国富論」は、そのようなイギリス有産階級共通の必要に見事に応える書物だったのでしょう。
18世紀末のイギリスに生きる人々にとっての、近現代外交史を簡潔に整理し、産業革命後の経済システムの変化を解説し、急激に拡大する諸外国との貿易の理論的根拠を提示する。すなわち「時代の変化・状況を簡潔に理解したい」との社会人共通のニーズを満たしてくれる一冊だったのです。
しかも、手元にある土地・資本などを、どう運用すべきかまでをも教えてくれる「投資指南書」でもありました。
200年を経て極東の島国で「国富論」を読むことは容易ではありません。西洋近代史の教科書やイギリス史・年表を手元に置いて読まなければ、アダム・スミスが例示し教訓とする出来事の大半が解らないからです。

それでも結論は「国富論は一読に値する」なのです。
その理由は次回簡単に解説したいと思います。

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)

著者:アダム・スミス

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)

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