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2008/11/15

BraveBook:アダム・スミス「国富論 下」

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究 (下)

      

買ったきっかけ:
引き続きアダム・スミス「国富論」の紹介です。
前回、肝心の内容紹介に入れませんでしたので、今回は内容紹介を中心に書いてみます。

感想:
そうは言っても、前回書いたように国富論の内容は18世紀イギリスのブルジョア階級の教養書ですので、例示されている事例や法税制などは過去のもの。現代人の教養の範囲には入っていない、いわば歴史の闇に消え去った一時的な現象を取り扱った部分が大半と言っても良いでしょう。従って、要約や抜粋をしてもあまり興味は湧きそうにありません。そこで、紹介は「国富論」を不朽の名著としているものに絞るべきでしょう。
一つは、現代経済が取り扱う領域を事実上確定したこと。もう一つは、その後の自由主義経済の基礎であり、共産主義革命が標的とするパラダイムを明確にしたことでしょう。

おすすめポイント:
国富論は、生産の仕組み、労働・資本・土地・賃金・価格の関係、貨幣、経済政策、貿易・金融、財政などを幅広く論じます。ケインズ革命以降の経済理論が財政・金融政策に重心を移しているとはいえ、現在経済学の領域は「国富論」の枠組みとほぼ一致しているといって良いでしょう。
後継者達により数学的発展を遂げた現代経済学に比べて「国富論」の経済学は「随筆」のようです。教養人が経済の仕組みをわかりやすく解説している。そんな印象なのです。今なら、テレビで経済評論家などがコメントする程度の内容を、豊富な例示により書物にした印象です。従って、経済理論書としてではなく18世紀イギリスの時代背景をイメージしながら読んでいくと、案外楽しむことができるのです。例えば当時急増した商品製造のための工場。それまで、自家消費や近隣で必要される限りで生産されていた工業生産品が、分業化され大量生産されるようになった時代の変化。生産の三大要素(労働・土地・資本)の解説。価格の決定と利潤。
もう一つ解りにくい「現在進行中の出来事」を明快に理解できる。「国富論」は当時の人々にとって、そんな書物であったに違いありません。

そして「国富論」の最大の功罪であるのが、完全なる自由競争への信奉でしょう。
経済活動は絶対に自由であるべきである。これがアダム・スミスの提示したテーゼです。
国内での生産や投資行為のみならず、外交貿易でも、自由競争の優位性が繰り返し説かれます。
自由な競争により、生産は拡大し、価格は低下する。自由な競争により、失われるものはなく、資本は最大限有効に利用されるようになる。
「国富論」はそう説きます。それが事実であるか否かは、未だ結論が出ていないことはご承知のとおり。
共産主義国家こそ消滅しましたが、資本主義国家は「アダム・スミス」と「ケインズ」の間を揺れ動き続けています。
そしてマルクスの「資本論」が攻撃する資本主義経済の枠組みが、「国富論」によりアダム・スミスが提示したものであることは重要です。
20世紀に生まれたものにとって、資本家・土地所有者を「経済的な悪者」として排除し、労働者のみの国家を造ろうとする資本論的共産主義理論は理解しがたいところがあります。
しかし、改めて「国富論」が商品の価格を、商品価格が地主の地代、経営者の利益、労働者の賃金から成っていると解説していることを知ると、その理由が良くわかるのです。
すなわち、労働者が働いて商品は作られるのに、そこに地主と経営者が「利益」を上乗せするため、価格が高くなる、そう理解したのでしょう。もちろん、生産の要素である土地や資本がなければ、そもそも生産活動自体が不可能なわけですが、それを労働者自身が所有管理すれば良い、マルクスの言わんとすることは、そう言うことだと理解できます。
また後に労働組合に発展する、技能労働者の権利保護のための組合組織を、自由競争の障害として理解している点などは、アメリカ共和党の労働組合を敵視する理論的裏付けを今も与えています。

そのような意味で、いまも「国富論」は朽ち果てておらず、21世紀の極東の島国の国民にとっても、一度は読んでみて損はない書物だと思うのです。

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究 (下)

著者:アダム・スミス

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究 (下)

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