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2009/01/23

日本が危ない:歴史で学ぶ「日雇派遣」問題の本質 4

「派遣切り」をどう解決するかのいくつかのアイディア
 一部評論家などが主張するような「日雇派遣の禁止」、すなわち派遣業法の再改正によって、日雇やごく短期の派遣、そして製造・建設などの業種への派遣禁止をすることで、この問題が解決しえないことは、以上みてきたように明らかである。
 戦後日本は労働基準法など法や行政制度上の建前では、直接雇用を原則とし日雇労働を例外として、間接労働を認めない国であった。しかし、その実態は、戦前からの労働者供給事業そして請負制度が実質的に温存され、大企業の工場内でさえ「社外工」「臨時工」さらには社内のみ通用する符牒で区別される下請企業の労働者が多数存在する国であった。大企業正社員と下請企業社員では歴然とした賃金格差や待遇格差が存在したが、法の建前と整合性をとるため名目的に職務に差異を設けるなどして、それを労働行政が黙認するような国であった。
 日雇派遣の禁止は、その格差を解消するどころか、労働環境を再び「戦後改革の建前」へと押し戻してしまうだけであり、何らの解決にもならないことは、あまりに明らかである。

 では、この問題はどう解決されるべきだろうか。どれも決定的とは言えず、別の問題も新たに引き起こす可能性があることを予め断りつつ、次の2つを提案したい。

  1. 労働契約書面化義務化と解雇規制の導入
  2. 同一労働同一賃金原則の法制化と雇用保険制度の抜本改正

 現行法では、労働契約は書面によることを求められていない。そのため、ひとたび転勤や減給・解雇などの問題が生じると、そもそもどのような条件で雇用されていたかを客観的に証明することは相当に困難である。それが、使用者に対して労働者が弱い立場におかれる大きな原因の一つである。
労働の内容、就業場所、賃金、期間などを雇用開始時に契約書として取り交わすことで、多くの問題は予防できる。この書面化の義務づけが法制化できない最大の理由は大企業が反対しているからである。事後的解決を容易にすることで、不当解雇などが予防できることは疑いがない。
 解雇規制にも、大企業を含む多くの雇用者は反対である。戦後長い期間、労働者の安易な解雇は公共職業安定所などの行政指導で抑制されてきた。その法によらない事実上の規制が一気に撤廃されたのが「小泉改革」のことである。確かに行政機関による恣意的な規制は好ましくない。労働者保護の観点にたって、労働基準法などに明確に解雇要件を限定列挙するのが法治国家であろう。
 ただし、この2つの導入により、短期的には求人需要は大きく減少することは避けられない。容易に解雇できればこそ、企業は雇用に積極的になるという側面は決して否定できないからである。したがって、解雇が横行し求人ニーズが減少している時期に、このような法規制を導入することは実際問題として不可能である。
 ワークシェアリングの導入が経済団体から提起されている状況では、2点目の同一労働同一賃金原則の法制化と労働行政諸制度の抜本改正が現実的解決策として有力である。
 賃金総額の圧縮・労働時間あたりの雇用者数増加などの側面だけで、ワークシェアリングは検討されるべきものではない。日本における少子高齢化の進行と労働者数の長期的減少などを前提として、労働者の労働条件の多様化の視点で論じられるべき大きな課題なのである。
重要なのは「同一労働・同一賃金」の原則である。同じ仕事なら時給単価は同じでなくてはならない。いかにも当然に思えるが、それが実現していないのが日本の実情である。正社員と派遣社員が全く同じ仕事を一緒にしていても、手取総賃金(ボーナスや年金額などを含む)は大きく異なる。労働者自身も何となくそれが当然と思っている、それが日本である。
 確かにある仕事の価値を客観的に金額に換算するのは難しいが、同じ仕事をしているときに、それを「誰」が行おうが同じ金額を払うことは、さほど難しいことではない。「同一労働・同一賃金」とはそのような意味であって、存在するどの仕事とどの仕事が同じ価値を持つのかを決めることではない。
 ボーナスや年金などを含め、この原則が適用できるよう法規定を整備することは、さほど難しい作業ではない。すべてを時給換算し比較可能となるよう「標準的な換算方法」を明確にするだけだからである。
 むしろ、より直接的な問題として雇用保険制度を抜本改正することが重要である。いくつもの案が考えられるが、最も現実的なのは現在の日雇雇用保険の仕組みを洗練・整理して、すべての労働者に適用させるとのアイディアである。
 現在、月給・年俸などにより給料が支給されている場合は、各種手当・ボーナスなどを加えた総額を、総労働時間で除して時給換算する。そのように、労働形態に関わらず、すべての賃金を時給に統一したうえで、時給あたりの納入印紙額を決定し、納付済印紙額を労働者個人毎に交付する雇用保険カードに記録するのである。
納付は実際に印紙である必要はなく、現行の源泉徴収と同様に会社で一括納入も認める。
 いざ失業状態になれば、雇用保険カードに記録された印紙納入額に応じて、失業手当に日額と期間が決定する。年間30日労働した人も、何十年間も勤続した人も、単純に金額換算した労働価値に応じて給付を受けられれば良いのである。
雇用の形態別に保険制度を細分化するのが愚である。時代の変化とともに、雇用形態多様化し変化するたびに、制度が複雑化し無理が生じるのは避けられない。
そのようなシンプルなセーフティネットを整備し、「同一労働・同一賃金」を法に明文化し徹底することで、日雇派遣で顕在化した「労働をめぐる格差」は抜本的に解消できるはずである。

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