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2010/09/19

BraveBook:かわぐちかいじ「ジパング 7」

横須賀に入港した「みらい」
米内大将の語る日本の敗戦の必要性
下町・深川で若き祖父と再会する角松少佐

大陸へ、満州へと向かう角松。
そして、中国人に成りすまして着々とジパングの実現にむけて行動する草加少佐。
満州国の建国パレード。満州国戦闘機から機銃掃射で狙われる皇帝・溥議儀。

複数の物語が、時間と場所を超えて展開していきます。
荒唐無稽の物語にリアリティを与える詳細な風景描写や人物像。
今後の展開を理解するうえで、とても重要な巻なのです。

満州国。
日本の傀儡国家と呼ばれ、ほとんどの日本人が実像を知らないまま理解を放棄してしまっているかのようです。
日露戦争の勝利によって、中国東北部に利権を獲得した新興国家・日本が数十年の実質支配を経て建国した満州国とは何なのか。
満州国の多様な側面を正しく客観的に研究した書物は想像以上に少ないのが現状ですが、ルイーズ・ヤング著「総動員帝国」はとても参考になった一冊です。
植民地支配とは、単に軍事力による占領ではなく、人的・文化的・経済的な総合的な「支配」であり融合なのだと気づかされました。支配した側でもなく、支配された側でもない、そして直接その時代を生きていないからこその研究成果なのでしょう。

植民地支配を一面的に「悪」と先入観を持たないことも学問研究においては重要な前提です。(決して帝国主義や戦争を肯定的に認めるつもりはありませんが)

日本人にとっての近現代史を見直すことが必要ならば、太平洋戦争の原因の一つとなった満州国を「正しく」理解することが、まずは必要であるように思われます。

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2010/09/05

BraveBook:かわぐちかいじ「ジパング 6」

この巻は、久しぶりに戦闘シーンが「主役」です。
横須賀に向け航行中の「みらい」を、米軍偵察機が発見。
伊号潜水艦に同乗する滝少佐の計略もあって、米空軍のドーントレスの編隊が襲いかかります。
未来の兵装により「みらい」の圧勝と思いきや、現実の戦闘では未だ「専守防衛」の思いに捕われている菊池砲雷長の迷いから、大きな損害を受けることとなります。
たとえ圧倒的な火力などを有していても、それを操るのは一人ひとりの人間。
それ以前に、兵器や弾薬に制約がある以上、原始的な「飽和攻撃」には対処できない現実が、しっかりと描きだされています。

菊池砲雷長の敵空母への決定的な攻撃の決断は、「みらい」が過去の「現実」を生き延びる決断そのものです。
「ジパング」は空想の物語でありつつも、限りなく「現実的な過去」を描き出していくのです。
巻末に収録された「マレーの残照」は、現代の日本人が教わることのなかった戦前の日本のある側面を実に解り易く描きだした秀作だと思います。
「太平洋戦争とは何だったのか?」 現代日本人が、そろそろ歴史的事実として、冷静に検証し総括すべき課題が、そこにあります。


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