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2010/10/17

BraveBook:かわぐちかいじ「ジパング 9」

久しぶりに「みらい」が主人公となる一巻です。
舞台はアリューシャン列島のアッツ島・キスカ島沖。
太平洋戦争の序盤、太平洋攻略の一環として兵力を展開したものの、南太平洋の緒海戦の敗北で、活躍の機会のないままに「玉砕」を余儀なくされた不遇の戦場が舞台です。

「みらい」の作戦目標は、両島の陸上戦力の無傷のままの撤退の支援。
ところが、米艦隊との戦闘が不可避となっていくのです。

未来から来た船「みらい」の高性能レーダーと機動力を駆使して、米艦隊の間を縫うようにして艦橋を破壊していく戦闘は、久々に読者の期待に応えています。

ただ、多少なりとも当時の海戦の戦術を知るものなら、実はこのような戦闘はあり得ないことは、いわば「常識」なのが残念です。
米戦艦は主砲での同士討ちを恐れて砲撃ができず完敗してしまうのですが、当時の戦闘艦には多数の副砲や機銃が装備されていて、接近戦で使用できる火器には事欠かないのです。
濃霧から現れた敵艦を、個別の銃座が独自の判断で射撃する。ただ、それだけで「みらい」の戦術は成立しないのです。

日清戦争時、主砲の火力に劣る日本海軍が清国の巨大戦艦に勝利した黄海海戦が、そのような戦闘の見本です。
当時の海戦での戦術は、まだまだカリブの海賊の「ラム戦」やネルソン提督の「トラファルガー海戦」からそんなに進歩していないのです。

そんな蘊蓄はともかく、深刻になりがちなテーマを興味深い人間ドラマとエンターテイメントとして一気に読ませてしまう「かわぐちマジック」には感激です。
現代の日本人がまず学ぶ機会のない、極北での敗北を取り上げることで、日本の近現代史に興味を持つ人が増えることは、十分価値があるに違いありません。


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