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2010/10/03

BraveBook:かわぐちかいじ「ジパング 8」

溥儀の救出に成功した角松。
元海軍医の一室に潜伏し、「溥儀暗殺」という歴史にない事実が実現しないよう時を待ちます。

でも、いかに傀儡政府の皇帝とはいえ、公式行事に列席している最中に、皇帝が護衛もなく、警備もなく、たった一人取り残され、一民間人とともに事故現場から「脱出」することが可能なものか? さすがに今回の展開には「?」を感じてしまいましたが、これも孤独な皇帝を象徴する「演出」としてなら、許容範囲なのかもしれません。

その溥儀のもとを中国服の草加が訪れます。そして、溥儀の『自殺』!?
読者を引き込んでやまない「かわぐちマジック」です。

物語後半は、横須賀海軍基地の「みらい」
山本長官以下との再度の会談。当時の「最新技術」によって「みらい」の補修が完了します。

そして、木戸内大臣の来艦。上奏による早期終戦の期待する乗組員の期待に反して木戸の口からは意外な言葉が。
「(この戦争は、)国民世論が後押ししたもの。」

この木戸内大臣の一言は、太平洋戦争について多くを知らない現代人にとって、あまりに意外かもしれません。
でも、多少なりとも「あの戦争」を調べてみたことのある人なら、実によく当時の状況を示していると言えるでしょう。

戦争末期の、悲惨な大空襲、2つの原子爆弾。日本全国が焦土となった「事実」を、未だ誰もが知らない時代。
多くの日本人にとって、日本=大日本帝国=神国日本は、心から誇りに思える国だったのです。
明治維新後の奇跡。黒船来航からわずか数十年で、目に見張る西洋化と近代化を実現し、日清・日露の大戦に勝利した日本。
第一次世界大戦に、多少なりとも大陸(中国本土)に利権を持って、戦勝国となった日本。その結果、旧ドイツの南洋群島などを所有することとなり、すでに併合した台湾や朝鮮、そして中国東北部(満州)などを経営することで、西欧列国と肩を並べたと自覚できた時代。

日露戦争の講和に不満を持つ国民が、日比谷事件を起こしたことは、当時既に遠い昔ですが、その後の政党政治の腐敗、軍縮会議での弱腰の交渉、米国から波及した世界不況など。

明治維新後、文字通り国民一人ひとりが「血と汗」で築き上げてきたものが、無能な政治家や強欲な資本家、軟弱な博愛主義者、そして極めて危険な共産主義者や無政府主義者によって失われるのではないか。国民世論は「政治の現状」に極めて不満と不信を蓄積させていた時代なのです。
その短絡的な解決策が「軍事力の行使」=「太平洋戦争」。
そんな日本近代史の機微は、いずれじっくりと語ってみたいと思います。


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